時を超える窓辺【ネコが演じる 都市伝説 NO.181】
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時を超える窓辺
猫が演じる不思議な話。
春も終わりを告げ、
少し暑さを感じる初夏の夜
父の遺影と
娘が成人したら一緒に飲みたがっていた
ビールを傍らに、
Aさんは海の見える窓辺に座っていた。
ちょうど1年前の今日も、
同じ場所で月を見ていた事を思い出しながら。
女の子がそんな格好で座るもんじゃない。
そう、言い放ったのは、
男手一つで、育ててくれた父だった。
Aさんの父は、いまでは珍しい古風な性格で、
しつけに厳しかった、
娘が19歳になっても、口うるさく、
1年前の今日、
そんな些細な事が原因で父親と大喧嘩をした。
それが生前の父との最後の思い出になってしまった。
喧嘩をした後に、バツが悪くなったのか、
夜のドライブにでた父は、そのまま戻ることはなかった。
赤信号で停車していた父の車に、
後ろから大型のトラックが衝突、即死だったそうだ。
もっと、素直にしていれば、良かった。
自分は大人のつもりだったが、
実際は、まだ子供だったのだろう。
あの時、喧嘩なんかするんじゃなかった。
ごめんね。お父さん。
1年が経ち、
ようやく今日、父の荷物整理することにしたのだが、
その中に、見慣れない懐中時計をみつけた
こんな時計持ってたんだ。
窓辺に座り、一人呟く。
リューズを巻いてみる。
すると、お酒が回ったのか、ただのめまいか、
一瞬、目の前が、暗く、歪んだような気がした。
待ってたよ。
後ろから、誰かに話しかけられた。
え。。。
扉を開けて、誰かが入ってくる。
その人物は、、
いらっしゃい。過去の私。
え、、何、、私。。
こんな顔して驚いてたんだ。。
私。。
驚きと、恐怖に似た感情で声もでない。
少し大人びた、
しかし、どう見ても自分にしか見えない人物は、
部屋の扉に手をかけたまま、はなしだす。
なにから話せばいいのか、、とりあえず、
時間がないから、黙って話だけ聞いてね。
その時計はね、、、
その人物は、一年後の自分で、
くだんの時計は、リューズを回すと、
特定の未来へ10分間だけ、行くことができるという、
到底、信じることができない話と状況に
雑然とした思考を整えようと、
理由をさがす。
そうか、、、これは、きっと夢だ。
お酒に酔っているのだ、
それとも、後悔がつくりだした脳内の幻。
説明はこんな感じ、ちゃんと聞いてた?
そろそろ、時間だか
そう目の前の人物が話し終えるか、終えないうちに
再び、目の前が暗くなり
次の瞬間、
部屋には自分しか居なくなっていた。
変な夢、、、幻覚だったのかな、
これが、白昼夢ってやつなのかな、、
私、、おかしくなっちゃったのかな?
ねえ、お父さん。
自然と涙が溢れ出す。
電気をつけていない部屋にひとり
聞きなれた波の音と、
月明かりが、優しくAさんを包み込む、
どうせなら、過去に行きたかったよ。
夢でも良いから、もう一度会いたいよ。
お父さん。
涙を拭い、
傍らに置いていた、
お酒をもう一口、口に含む。
やっぱり、、にがいな、、、
扉の開く音に、反射的に振り向くと、
爽やかな初夏の夜風が頬をなでる。
女の子がそんな格好で座るもんじゃない。
優しい風の中に、
かすかに、懐かしい父の匂いがした。
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