陽炎の中の残光 動画
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陽炎の中の残光
猫が演じる不思議な話。
夏の蒸し暑い夕暮れ、
陽が落ちるのも、だいぶ遅くなり、
少し遠回りをして帰ってみようと
その日、Aさんは川沿いの道を歩いていた。
川沿いの開けた地形独特の開放感と、
少し潮の香りの混ざった風が心を和ませる。
都会に出てきてから、
時々こうして、わずかな自然を感じて、
故郷に思いを馳せる。
夢を追って都会に出てみたものの、
結局、何も実を結ばず、
こうして平凡な会社員をしている。
そう思うと
少しの後悔が胸の奥でチクリと痛む。
キラキラと輝く水面を眺めていると、
なぜだか哀愁が湧き、自然と涙が溢れる。
大きなため息を付き、
空をみあげると、
フワフワと不思議な球体が頭上を飛んでいる事に気付いた。
赤、青、紫、それは、様々な色をしている。
なんだろう?
よく見るとシャボン玉のようだ、
しかし、普通のシャボン玉ではない。
どこから、飛んできているのかと辺りを見回すと、
少し離れた所で、小さな女の子が一人、
遊んでいる。
普段は子供に声などかけないが、
そのシャボン玉が気になり、話しかけてみた。
色んな色ができるのね?
その少女は、ストローをくわえたまま、
Aさんの方を見ると、
うんうんと頷く様な仕草をした後、
こんな事を言ったという。
これは、今日なくなった方々の夢の塊です。
それを来世で叶うように天に戻しています。
前は途中で割れてしまっていたのですが、
少しずつ改良を重ね、今では天界まで飛ぶ様になりました。
何を言っているんだろう、
だいぶ変わった子だな。。
やはり、話しかけるべきでは無かった、
そう思ったそうだ。
人の世では、
人の夢と書いて、
儚いと読むと聞いています。
亡くなったかたは現世では、
もう夢を叶えることはできません。
しかし、生者はそうではありません。
儚いは、果敢ないとも書くそうです。
果敢とは、思い切って物事を行なうこと。
決断力に富んでいること。
あなたは、三途の川を渡らずに、
果敢にも、もう一度やり直す決断をしたのですから、きっと大丈夫ですよ。。
その言葉を聞くと、
一瞬、目の前が真っ白になった。
先生、バイタル戻りました。
Aさんは自動車事故に巻き込まれ、
目覚めると病院のベッドの上にいたという。
いっときは、命も危ない状態だったそうだ。
夢とは元々は、
暗い、よく見えないという意味だったという。
そこから派生して、
将来実現したい漠然とした願望や理想のこととなったらしい。
誰もが夢を現実にできる訳ではない、
努力をしても報われないことは多い。
しかし、彼女は漠然とした夢の中で、
生きるという目標を見失わず、
もう一度、挑戦することにしたのかもしれない。
人生は、その大半が挫折の連続である、
しかし、それは挑戦したからこそ、
体験できる経験なのだろう。
そして、その経験は、いつの間にか、
あなたを強くしているのかもしれない。





