不思議なシャワーヘッド【ネコが演じる 都市伝説 NO.171】
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不思議なシャワーヘッド
猫が演じる不思議な話
今日も報道人が道に立っている。
道を塞ぐように立つ人だかりを横目に、
鞄を両腕で抱え込み、
側道を目立たないように歩く。
「何か事件があったのかな? 怖いな。。」
テレビもSNSも見ない。
もうすぐ卒業なのに通っている音大でも親しい友人はいない。
一人暮らしのAさんには
近所で何が起きているのか皆目見当がつかなかった。
「はあ、今日も疲れた。。」
楽譜の入ったカバンを床に置くと、
先日取り外した古いシャワーヘッドが転がった。
「引っ越す時には戻しておこう。」
一人呟き、
脱衣所に向かう。
家に帰ると、
まずシャワーを浴びるのがAさんの習慣だ、
彼女にとって、
これ程、至福な時間は無い。
しかし、数カ月前、、、
部屋のシャワーヘッドが壊れてしまった。
あと少しで卒業。
地元に帰ることは決まっている。
管理会社に連絡するのも面倒なので、
自分で買ってきて付け替えてみた。
不気味な個人商店で買ったのだが、
品物自体は悪くなく、
ミスト機能とジェット機能にも切り替えられる。
しかし、全く分からないのが、、、
「このマイクのマークなんなのだろう?」
「押してもなにも起こらないのよね。」
「まーシャワーは浴びれるし、いいけど。」
特に気にすることも無く。
シャワーヘッドを握り趣味で自作した歌を熱唱する。
。。。
『本当に聞える。カメラ回して、、』
数カ月前から、SNS、ネットニュースでは、
ある都市伝説がトレンドを賑わしていた。
日本のとある地域の排水溝から、
この世のものとは思えないほどの美声で歌われる歌が聞こえ始めたのだ。
その歌声を誰かがSNSに投稿してから、
その情報は各メディアでも取り上げられ。
才能ある音楽や映像などのクリエイターが
各々遊び半分で、
その歌声に独自の音楽などを加える事により加工され。
その美声は
女神の歌声として世界中で賞賛されていた。
しかし、
その歌声の持ち主は、
各メディアが数カ月探しても特定されることはなく。
いつしか、聞えることはなくなり。
地底の女神、下水道の天使などと
都市伝説として語り継がれる様になった。
Aさんは、大学を卒業後地元に帰り、
中学校の音楽の教員となった。
今でも、
世間の情報には疎く、友人も少ないが、、、
教え子たちには、非常に慕われている。
評判の良い教師らしい。
そして、彼女の教えた卒業生には、
何故か有名な歌手や音楽家が多くいるという。
人は自分の才能に気付かない事が多いという。
そして他人もまた、
気付く事ができないことがある。
しかし、誰も気付かないだけで、
他の人の才能にミストの様に潤いを与え、
ジェットの様に磨きあげ、
大きな花を咲かせているのかもしれない。
あのシャワーヘッドはどうなったか?
肩が凝った時に使ってみたら、
気持ち良かったので、今はカバンにいつも入っているらしいですよ。
いつかそのうち、、
彼女の肩にも大輪の花が咲くことだろう。






